人気ブログランキング | 話題のタグを見る

夏祭り.その2

 私が住んでいるこの町には一家代々受け継がれている花火職人の家がある。
 家の門にどでかく装飾された、九尾の狐をあしらった家紋が目を惹くとても大きい家だ。
 住んでみたいと思うほど、ほんと立派だ。
 この家紋、キュウコンという炎タイプのポケモンをモデルにしているそうだけど…、この辺ではまず見かけない。
 どこからか移り住んできた家系なのかな……? 花火界では結構有名らしいけど。
 しかし、火気厳禁な仕事場なのに、なんで炎系のキュウコンなんだろ…。

 ともかく、そんな名家の花火が拝めるのが、今日の夏祭り最大のメインイベントである花火大会だ。
 この花火のために、午前中に出店などではしゃぎ回った疲れを取るため、家の縁側で休んでいたら…いつのまにか寝ちゃってた…。


「っだーぁ! 寝過ごした!? 今何時?」
 私は慌てて上半身を起こしながら時計を探した。
 頭を動かすたび、癖毛で外ハネの前髪が揺れる。
「ゆき、落ち着いて。はいはい、深呼吸ー。ふーっ、はぁー。」
 私の慌てっぷりがひどく滑稽に見えたのか、軽く茶化しながら私をなだめる。
「大丈夫。大丈夫、時間にはまだ間に合うよ。ほら、仕度して。一緒に行こ?」
 訊かれなくとも答えは決まってるのに。
 浴衣の着崩れを直しながら、ウンと頷き、と返事をした。
「呼びに起こしに来てくれて、ありがと。」
 と、付け加えて。
 するとスズは、すこし照れた表情を見せた。


目次へ
by byo_teng | 2005-05-11 21:23 | ss


<< のまのま LG >>